祖父の星

原文 – OLD MAN STAR (CHRONICLE)

 Gallente FederationのPeccanouette環状線からPatrie宙域に向かう航路を取る者たちは、かつてOuperia星系と呼ばれていた――白く、冷たく、住民のいない、ちいさな太陽系――を中継点として使う。人々はいまやOuperiaという名前ではなく、誰もが知る通称でこの太陽系を呼ぶ。すなわち、Old Man Starである。

星間ジャンプドライブは比較的新しい技術だ。この技術が発明される以前、帝国が領土を広げる手段は、遠方の太陽系に船を送り、スターゲートを建設するほかになかった。太陽系から太陽系へと移動する建造船は、いちばん速いもので、光の速度の30%ほどで航行した。10光年離れた太陽系にたどり着くまで、33年ほどかかる速度だ。航海のあいだ、建造船の乗員たちは低温カプセルに入り、仮死状態となる。そして目的地に近づくと目覚める、というしくみであった。

星間ジャンプドライブ技術が確立された後には、こういった建造船にもジャンプドライブが搭載されることになり、何十年にもわたる旅は、 もはや過去のものとなった。しかしながら、古い建造船はジャンプドライブを搭載するための新しい技術に適しているわけではなかっ た。ジャンプドライブの誤作動によって引き起こされた様々な事故のうわさは、人々の間で絶えず交わされていた。Old Man Darieuxの建造船にまつわるこの話も、そんな話のひとつである。

YC11年、ガレンテとカルダリのあいだで続いていた戦争が終わりに近づいたころ、あるガレンテの建造船が、荒廃した太陽系、Ouperiaに向けて出発した。同太陽系のアステロイドベルトを確保し、資源を確保するというのがおもな目的だったが、Peccanouette環状線とPatrie宙域を結ぶ交易経路の確保も、長期的な計画に組み込まれていた。建造船はVillore星系から出発し、12光年の旅に出た。到着までの時間はほんの数分と計上された。乗員は五人で、何百人もの人手が必要だった昔とは大違いだった。この頃、スターゲートを実際に建造していたのは、戦争のために開発されたドローンやロボットの大群で、乗員たちはそのオペレーターや技術者として配備されていた。

建造船が出発してすぐ、惨事が船を襲った。ジャンプ航路の計算に不一致が起こり、目的地から数光年も離れた、辺境のアステロイドベルト の中ほどへと、船はジャンプした。巨大なアステロイドが船に衝突し、乗員のうち四名が死亡した。しかしその中で、たったひとり生き残っ た者がいた。彼の名はCeul Darieux。建造船のドローンオペレーターだった。

そのころ、いまだ戦争の火中にあったガレンテ当局は、コンコードを立会人として、カルダリとの和平交渉に手一杯だった。当局はOuperiaのような、短期的にはあまり重要でない星系に向かった、せいぜい数百万ISKの船を捜索するよりも、計画を棚上げにすることを選んだ。建造船のジャンプドライブの誤作動は、ステーションに送信されたログから見ても明らかだったうえに、船のビーコンは破壊され、音声通信にも応答はなかった。建造船は事故により沈没したものとして処理された。

Darieuxにとってすぐに解決しなければならなかった問題は、食料の確保だった。スペースと重量を抑えるために、建造船に食料は積み込ま れていなかったが、食用の植物の球根と、それを栽培するための温室は装備されていた。しかしながら、太陽の光と熱がなければ球根は育たず、太陽から遠く離れた深宇宙において、それらは役立たずだった。水や酸素も不足していた。船の状態はひどいものだった。衝突したアステロイドベルトは船に深い傷をつけ、ほとんどの主要なシステムは機能停止していた。カーゴの中はとくにひどかった――破壊されたさまざまな装備品と、アステロイドのかけらが、宙にふわふわと浮かんでいた。

Darieuxは自分の持つ技術者としての能力を、問題の解決にあてた。彼はまず燃料ベイに手を付けた。燃料タンクには、目的地に近づいたときの減速用の動力として使われるはずだった、液体水素と液体酸素が入っていた。可燃性の液体で満たされたタンクに手を付けるのはとんでもなく危険だったが、Darieuxは注意深く、慎重に仕事を続け、ついには水と酸素を供給する反応炉を作りあげた。つぎに彼は船のなかに散らばっていたガラスや鉄板を溶接し、遠く離れた星々からの光を集めるプレートを作った。そして彼は、温室のシステムを船の循環システムと連結し、球根を育てはじめた。そしてすぐに、ひとりの人間を養える程度の、酸素と水と食料が供給できるようになった。つまりDarieuxはたったひとりで、環境システムを作り上げたのである。

船のなかで生きていくための手段を確立したあと、Darieuxは船の航行するコースを元に戻さなければならなかった。アステロイドとの衝突が船の進行方向をずらしてしまったために、このままではOuperia星系に近づいたとしても、星系から数億キロも離れたところを横切るはめになる。エンジンは修復不可能なほどに破損していた――船はコントロール不可能なまま、宇宙の彼方へと永遠に進みつづける運命にあった。時間が経てば経つほど、船を元の航路に戻すことは難しくなる。すぐにも解決しなくてはならない問題だった。そこでDarieuxは、時間をかけて新しいエンジンを作ったりはせずに、もっと明快な手段を取った。船にはいくらかの戦闘用ミサイルが搭載されていた。Daeriuxはミサイルを発射し、操作して、自分の船のいちばん装甲の厚いところに命中させた。注意深い計算と、爆発半径の調整によって、船はもとの航路に戻りはじめた。ほんの少しのあいだ、Darieuxは、何度か同じことを繰りかえして、航路を逆向きに戻ることを考えた。しかしそうするために十分な量のミサイルはなかったし、あったとしても、傷ついた船体が持ちこたえられるとは思えなかった。

そして、長く単調な旅が始まった。現在の速度では、Ouperia星系にたどり着くまでは何十年もかかる計算だった。Darieuxはカーゴのなかにあったスクラップをあさり、すてきなロボットをいくつも作り上げた。船と衝突したアステロイドには、偶然にも、非常に希少なMegacyteが多く含まれていたことに、彼はあとになって気づいた。この鉱石には、ロボット工学やドローン開発に重要な役割を果たす物質が含まれていた。無重力下での長期的な実験は、Darieuxにとってすばらしい開発の機会となり、資源や工具が限られていたにもかかわらず、この長い長い旅のあいだに彼の手によって作られたものは、じつに独創的で、素晴らしいものばかりだった。

隕石の衝突やミサイルの衝撃による減速のために、スケジュールから44年遅れで、船はOuperia星系に入った。Darieuxはこの時のために、数年間をかけて、船をさらに減速するための機構を開発していた。彼のおもな手段は、惑星の重力を利用するものだった。エンジンの制御系が壊れていたにもかかわらず、Darieuxは生き残っていたエンジンに直接配線し、残り少ない燃料で点火した。彼は惑星のあいだをジグザグに航行し、自らの手で作り上げたシールドで船を被い、時には大気圏を掠めながら、重力を利用して減速していった。この型破りな方法で、Darieuxは船を星系に引き留めたのである。

このときすでに、Darieuxは老人だった。無重力での生活は、彼の身体を衰えさせていた。しかし彼の意志はいまだ強く、諦めることを知らなかった。彼はいま、目標地点にたどり着いたのだ。しかしそれでも、この遠いOuperia星系にあっては、どのような救助も期待できなかった。彼の運命は彼自身の手中にあった。彼がすべきことは、たった一人でスターゲートを建造することだった。

船に積み込まれていた、スターゲートを建設するために必要な資材は、どれも使い物にならなかった。Darieuxはまったく新しい方法で仕事を始めた。彼は革新的なドローンを製作し、ロボットの工場を作り上げた。彼はレゾナンス・ポイントにほど近い、白い恒星とその小さな茶色い衛星のあいだにある、巨大なアステロイドを仕事場に決めた。そのアステロイドに、Darieuxは小さな工場と、自分の住処を作った。彼はそこで、自ら製作したロボットの仲間たちとともに、五年の月日をかけ、たった一人でスターゲートを建設した。全宇宙でも数えるほどしかないような、偉業であった。Darieuxはこのとき80歳に達していた――髪は白くなり、顔には皺が寄り、両手は震えていた。

つぎはぎだらけの建造船が、スターゲートを抜けて現れたその瞬間の、Villore星系のスターゲート管制官たちの驚きを想像してみてほしい――それは失敗に終わったと思われていた作戦の、思いがけない勝利の凱旋だった。Darieuxは世間の脚光を浴び、その後に、彼は自らの会社――CreoDron社――を立ち上げ、半世紀にも渡った航海のあいだに製作されたブループリントを販売した。しかしほんの数年で、彼は鬼籍に入った。やせ衰え、弱っていた彼の肉体は、クローニングには耐えられなかった。しかし彼の遺産は、今日にも受け継がれている――CreoDronはNew Eden最大のドローン製造会社としてその名を馳せ、創設者の意志はドローン産業のあいだにいまも受け継がれている。
そして彼の偉業に敬意を表すために、人々はOuperia星系をOld Man Star(祖父の星)と呼ぶようになったのだ。

 

本社をOld Man Starに移したついでに、気になって調べたらクロニクルがあったんで訳しました。ロマンな話ですね。 – ROLLSTONE

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One Response to “祖父の星”

  1. Bloody Crocodile, 返信

    EVEには他にもいろいろな話が作られているようです。
    気にはなりますが、まずは英語の勉強を続けなければ・・・

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